人生のレールを外れた男の物語

社会の歯車から外れたらどうなるか、私の友人の実体験を元に、綴ろうかと思う。

2.レストラン

彼の入社した会社は、ケーキを販売する売店の他に、フレンチレストランがある。

餅は餅屋とは言うが、パティシエと料理人がいる。勿論、売店が有るから販売員、レストランがあるからウエイターもいる。

 

売店のケーキは当然、彼の所属する部署担当だが、レストランで提供されるデザートも、ケーキ部門の担当となる。

 

新入社員や、中途社員等は、必ず最初はレストランでデザートを提供する仕事を与えられる。

とは言っても、ただのデザートでは無い。

例えば、ステーキが1万円する様な高級店だ。

コース料理となれば、高くて2万円する。

そこで仕上げるデザートだ。緊張感は半端では無い。

 

何故、そんな新入りに、高級店のデザート作りを担当させるのか?

根本的に、新卒にケーキ作りが出来無い前提らしい、デザートなら、諸先輩方が作ったお菓子を皿に並べるだけだから、作るよりも簡単だろうと言う事らしい。

 

しかし、デザートと言っても、3種類のコース料理に、単品(アイスクリーム等)でも7〜8種類有る。

作るのは大変なのは兎も角、それらを1人でこなさなくてはなら無い。

 

注文が重なれば1人で10品以上も一度に仕上げなくてはならない。

ファミレスでは無いから(ファミレスが悪いとは言わないが)、長く待たせるわけにも当然いかない。

しかし、そんな不慣れな環境下での業務だ。やるしか無い。

 

彼はその時思った。

ここは戦場だ。

いつかTVで見た、罵詈雑言、殴る蹴るがあった、それと同じ環境だ、と。

 

彼は初めて、社会人としての地獄を見た事になる。

そして、経験する事になる。