人生のレールを外れた男の物語

社会の歯車から外れたらどうなるか、私の友人の実体験を元に、綴ろうかと思う。

5.縁故

彼は、彼が学生時代の恩師の縁故で、当時の会社に入社した、いわば裏口入社に近い。

故に、3ヶ月位で辞めたくなった気持ちも有ったが、ここで辞めたら恩師の顔に泥を塗る形になってしまう。

 

今の時代の縁故入社したりした若い世代は、そんな事は考えず、嫌だと思ったら辞めるのが当たり前なようだが、人一倍彼は、迷惑をかけるのを嫌った。

 

故に、彼は、我慢し続けた。

どんな罵詈雑言にも耐えた。

辞めて恩師の顔に泥を塗る醜態を晒すのを嫌がった。

 

今の時代なら、パワハラが酷いから、とかで辞める事も可能だろう。これだけ社会問題になっている訳だし。

しかし、当時は、パワハラと言う言葉は無かった。

職人の世界ははひたすら耐えるのが当たり前、耐えられなかったら一人前にはなれない、そう言う風潮が有ったからだ。

 

彼は、実に耐えた。

思えば、これが、精神を病む、きっかけの一つだったのかもしれない。

 

コレが、自己入社だったら、辞めていただろうが、縁故入社だからと言うストッパーが有ったから、彼は我慢し続けた。

 

今の時代なら、縁故関係無く、無理はしないで欲しいと思うが。